親を旅行に連れて行く準備 — 車椅子・認知症でも楽しめる10のコツ
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「もう一度、温泉に連れて行ってあげたい」——その願いを諦めないために
母が施設に入る前に、最後に温泉に連れて行ってあげたかった。でも車椅子だし認知症もあるし「無理だよね」って自分で諦めてた。あとから「行けた」って人の話を聞いて、もっと早く調べればよかったと泣いた。 — Xユーザー(会社員・50代女性)2026年4月
このような後悔の声は、決して少なくありません。
「介護が必要になったら旅行は無理」——多くの家族がそう思い込んでいます。けれど実際には、準備次第で旅行は実現できるケースが多いのです。観光庁も「ユニバーサルツーリズム」という政策を進めており、バリアフリー対応の宿や交通機関、サポートサービスは年々拡充されています。
「諦めなくていい」——その可能性を、まず知ってください。
この記事では、車椅子や認知症の親と一緒に旅行を実現するための10のコツを、データと経験者の声を交えてまとめました。
この記事でわかること:
- 介護中の旅行に関する最新データと現実
- 出発前に必ず確認したい5つの準備
- 移動手段別の選び方と車椅子・認知症への配慮
- 旅先で役立つサービスとトラブル対応
- 経験者の「行ってよかった」と「次回への教訓」
介護中の旅行は本当に行ける?データで見る現実
結論から言うと、要介護1〜3程度であれば、多くの方が旅行を実現できています。
観光庁は「ユニバーサルツーリズム」(高齢者・障害者が安心して旅行できる環境づくり)の施策を継続しています。手引き集やリーフレットを通じて、安心して旅行できる環境整備を進めています。バリアフリー対応の宿や交通機関も年々拡充されています。
また、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称バリアフリー新法、2006年施行)に基づき、駅・空港・主要観光地のバリアフリー化も進んでおり、新幹線の各列車に車椅子対応座席と多目的室が設置されています。
出典: 国土交通省「バリアフリー化推進功労者大臣表彰」関連ページ
| 要介護度 | 旅行の難易度 | おすすめスタイル |
|---|---|---|
| 要支援1〜2 | ★☆☆☆☆ 低 | 通常の旅行に近い形で可能 |
| 要介護1〜2 | ★★☆☆☆ 比較的低 | 1〜2泊・近距離・バリアフリー宿 |
| 要介護3 | ★★★☆☆ 中 | 介護タクシー・トラベルヘルパー併用 |
| 要介護4〜5 | ★★★★☆ 高 | 看護師同行ツアー・短時間外出から検討 |
父は要介護2で認知症もあるけど、近場の温泉に1泊だけ行ってきた。バリアフリーの部屋で車椅子のまま露天風呂に入れて、父が「気持ちええなあ」って笑った。それだけで来てよかった。 — Xユーザー(自営業・50代男性)2026年3月
つまり、「うちは無理」と諦める前に、何ができるかを調べる価値が十分あるということです。
出発前に確認したい5つの準備
旅行を成功させる鍵は、出発の3〜4週間前から始める準備にあります。
準備1: かかりつけ医に「旅行可否」を相談する
まず最初にやるべきは、かかりつけ医への相談です。「○月に1泊で温泉に行きたい」と具体的に伝え、以下を確認します。
- 旅行に出ても問題ない健康状態か
- 持参すべき薬・予備の量
- 旅行中に体調が悪化した場合の対応指示書(医師の連絡先入り)
- 緊急時に他院で見せる「診療情報提供書」の発行可否
この一手間が、旅先での万一の安心につながります。
準備2: 持ち物リストを介護用にカスタマイズする
通常の旅行とは別に、介護に特化した持ち物を用意します。
- お薬手帳・健康保険証・介護保険証(コピーも含めて2セット)
- 普段使っている介護用品(おむつ・パッド・口腔ケア用品など)
- 着脱しやすい衣類・防寒具・予備の下着
- 緊急連絡先カード(本人の氏名・住所・家族電話・かかりつけ医)
- スマートフォンと充電器(GPSアプリ起動推奨)
準備3: 行程は「半分」のスピードで組む
健常者の感覚で行程を組むと、必ず疲弊します。移動時間は通常の1.5〜2倍を見込んで、観光は1日2〜3スポットに絞りましょう。
- チェックインは早めに(午後3時には宿に着く想定)
- 食事の時間にゆとりを持たせる
- 休憩スポットを行程に組み込む
「予定を詰め込まない勇気」が、結果的に楽しい旅につながります。
準備4: 宿はバリアフリー対応を「3点確認」する
「バリアフリー対応」と一口に言っても、施設ごとに対応レベルは大きく異なります。予約前に必ず以下を電話で確認しましょう。
- 段差: 入口・部屋・浴室にどのくらい段差があるか
- トイレ: 手すり付きか、車椅子のまま入れるか
- 入浴: 大浴場が使えるか、家族風呂・部屋付き露天はあるか
「車椅子対応」と書いてあっても、実際は「玄関だけスロープがある」程度の宿もあります。写真と電話で必ず実態を確認してください。
準備5: 旅行保険・補償を確認する
国内旅行でも、介護保険利用者向けの旅行保険を扱う保険会社があります。万一の医療費・搬送費・キャンセル費をカバーできるため、加入を検討する価値があります。
また、自治体によっては介護旅行への補助金制度を設けている場合もあるため、地域包括支援センターに「補助金や支援サービスはあるか」と尋ねてみましょう。
移動手段別 — 車椅子・認知症でも安心の選び方
旅行成功の8割は移動手段で決まります。それぞれの特徴を押さえて、親の状態に合った選択をしましょう。
新幹線・特急列車の場合
JR各社では、車椅子対応座席と多目的室が全列車に設置されており、事前予約ができます。
- 予約は乗車2日前まで(みどりの窓口・電話・JR東日本「えきねっと」など)
- 乗降時に駅員が介助してくれる
- 多目的室はカーテンで仕切れるため、休憩や授乳・おむつ替えにも使える
出典: JR東日本「お身体の不自由なお客さまへ」(公式サイトの「サービス&プラン」より「お身体の不自由なお客さまへ」を参照)
飛行機の場合
各航空会社のサポートデスクに出発48時間前までに連絡すれば、搭乗から降機まで車椅子サービスが受けられます。
- 機内用の細い車椅子に乗り換え
- 優先搭乗・優先降機が可能
- 酸素ボンベ・電動車椅子の持ち込みも事前申請で対応
介護タクシー・福祉車両の場合
ドア・ツー・ドアで移動でき、最も負担が少ない選択肢です。介護タクシーは要介護認定を受けていれば介護保険適用になる場合もあります(通院・通所目的に限る)。
旅行目的の場合は自費利用となりますが、運転手が介護職員初任者研修以上の資格を持つ事業者も多く、安心感があります。
自家用車の場合
最大のメリットは休憩のタイミングを自由に決められること。ただし、長時間運転は同乗者の負担が大きいため、2時間に1回はサービスエリアで休憩を取りましょう。
| 移動手段 | メリット | デメリット | おすすめ介護度 |
|---|---|---|---|
| 新幹線 | 速い・揺れが少ない | 駅構内の移動が必要 | 要介護1〜3 |
| 飛行機 | 遠距離に強い | 手続きが多い | 要介護1〜2 |
| 介護タクシー | ドアtoドア | 費用が高い | 要介護2〜5 |
| 自家用車 | 自由度が高い | 運転負担 | 要介護1〜4 |
旅先で役立つサービス・グッズ5選
旅先で「持ってきてよかった」と多くの経験者が挙げるのが以下の5つです。
1. 折りたたみ式の旅行用車椅子
普段は歩行できる方でも、観光地の長距離歩行には旅行用車椅子が安心です。1日500〜2,000円でレンタルでき、駅や空港で受け取り・返却できるサービスもあります。
2. ポータブル尿瓶・吸水パッド
長距離移動中のトイレ問題は、本人にとっても大きなストレス。携帯用の尿瓶や、念のための吸水パッドがあるだけで安心感が大きく違います。
便利なグッズについては別記事でも詳しく紹介しています。 → 介護で本当に役立つ便利グッズ20選 — 在宅介護の負担を減らすアイテム
3. GPS端末・見守りアプリ
認知症の親と旅行する場合、ホテルのロビーや観光地で目を離した瞬間にいなくなるリスクがあります。GPS端末を首から下げる、または靴に内蔵するタイプを使うと、いざというとき位置情報で発見できます。
4. トラベルヘルパー(外出支援専門員)
介護資格を持ち、外出・旅行に同行してくれる専門員です。1日2〜3万円が相場ですが、家族だけでは不安なケースに頼もしい存在です。日本トラベルヘルパー協会で全国の登録ヘルパーを検索できます。
出典: 日本トラベルヘルパー協会
5. 携帯用クッション・体位変換用具
長時間座位が続くと褥瘡(じょくそう)リスクが高まります。携帯できるエアクッションや、移動中に体位を変えるための小さなタオルなどが役立ちます。
認知症の親と旅行するときの特別な配慮
認知症の方は、見慣れない環境で混乱(せん妄、急性の意識障害)を起こしやすい特性があります。認知症ケアの専門家からも、旅行中は普段の生活リズムを大きく崩さないことが望ましいとされています。
出典: 認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会監修)
具体的な配慮ポイントは以下の通りです。
- 滞在は1〜2泊にとどめる: 長期になるほど混乱が起きやすい
- 同室で就寝: 夜間に目が覚めても見守れる体制を
- 見慣れた持ち物を持参: 普段使っている枕カバー・タオル・写真など
- 一日の流れを写真カードで示す: 「朝食→温泉→お昼→帰る」など視覚的に
- 無理に観光地を回らない: 宿でゆっくり過ごすだけでも十分
母は重度の認知症で、温泉行く前は「迷子になったらどうしよう」って怖くてしかたなかった。でもGPS靴と部屋食付きの宿を選んで、結局母は宿で寝てる時間が多かったけど、お風呂で「気持ちええなあ」って言ってくれた。短時間でも、その一言のために行く価値があった。 — Xユーザー(パート勤務・60代女性)2026年5月
トラブル時の対応 — 慌てないための事前準備
万が一に備え、出発前に以下をスマートフォンにメモしておきましょう。
- かかりつけ医の連絡先と「旅行中の体調変化への対応指示」
- 旅行先の最寄り救急医療機関(事前に検索しておく)
- 加入している旅行保険のサポート窓口
- 本人の介護保険証番号と要介護度
- 家族・親族の連絡先
特に**「119番をかけたとき何を伝えるか」**を一度シミュレーションしておくと、慌てずに済みます。
経験者が語る「行ってよかった」と「次回への教訓」
実際に介護中の親と旅行に行った方々の声を集めました。
「行ってよかった」の声
- 「家にいると暗かった父が、車窓を見て嬉しそうにしていた」
- 「最後の家族写真がその旅行で撮れた」
- 「弟夫婦と顔を合わせる機会になり、介護分担の話もできた」
「次回への教訓」の声
- 「2泊3日は親が疲れすぎた。次は1泊にする」
- 「観光地を3つ回ったが、1つで十分だった」
- 「予約時に『手すり付き浴室』と聞いたら『湯船には手すりなし』だった。電話で写真を送ってもらうべき」
旅行は完璧でなくていい。「一緒に出かけた」という体験そのものが、家族の宝物になります。
リフレッシュの大切さや、介護する側の休息の取り方については下記の記事も参考になります。 → 介護リフレッシュの方法10選 — 自分を取り戻す時間の作り方 → ペットと暮らす高齢の親 — 旅行中のペット預け先の選び方
今日からできるたった1つのこと
10のコツを紹介しましたが、すべてを一度にやらなくて大丈夫です。
今日できること、1つだけ提案させてください。
「親と行きたい場所」を1つだけ書き出して、親に話してみる。
「もし行けるとしたら、どこに行きたい?」と聞くだけで、親の表情が変わることがあります。実現できるかどうかは、その後の準備次第。まずは可能性を開くことから始めましょう。
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まとめ
介護中の旅行は、**「諦めるもの」ではなく「準備次第で実現できるもの」**です。
この記事のポイントを振り返ります。
- データが示す現実 — 観光庁のユニバーサルツーリズム政策によりバリアフリー対応宿や交通機関の整備が年々進んでいる
- 5つの事前準備 — かかりつけ医相談、介護用持ち物、ゆとりある行程、バリアフリー宿の3点確認、旅行保険
- 移動手段の最適化 — 新幹線・飛行機・介護タクシー・自家用車から介護度に合った選択を
- 旅先で役立つ5つのサービス — 旅行用車椅子、ポータブル尿瓶、GPS、トラベルヘルパー、携帯クッション
- 認知症の親への特別配慮 — 短期間・同室・見慣れた持ち物・無理しない行程
- 「一緒に出かけた」体験そのものが宝物 — 完璧でなくていい
旅行に出かけることは、親を「介護される人」から「一緒に楽しむ人」に戻す時間でもあります。
まずは「行きたい場所」を親に聞くことから。その小さな一歩が、家族の物語に新しい1ページを加えてくれます。