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親が認知症で銀行口座が凍結されたら?解除方法と4つの解決策【2026年版】
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「あれ、引き出せない」——窓口で告げられた一言から始まる
一昨年他界した母が亡くなる2週間位前に認知症を発症していたのですごく解る。独り言が多いのと会話がかみ合わないなと思い始めたある日、他人に話しかける様にニコニコと敬語で「あの〜どなたか〇〇して頂けますか」と言って来て頭が真っ白になった。在宅介護をされる方はどうか背負いすぎないで欲しい。 — Xユーザー(在宅介護経験者)2025年5月
認知症の兆候に気づくのは、いつも突然です。そして、その混乱が落ち着く前に、もう一つの壁が立ちはだかります。「親の銀行口座から、お金が下ろせない」 という壁です。
施設の入居一時金、月々の介護費用、毎月の生活費、医療費。すべて親の口座から払う段取りで考えていたのに、ある日窓口で「ご本人の意思確認ができないので、お引き出しはお受けできません」と告げられる。多くの家族が、ここで初めて「口座凍結」という言葉と出会います。
この記事では、なぜ凍結されるのか・凍結を回避する4つの選択肢・もし凍結されたら何ができるのかを、費用と難易度で比較しながら整理します。読み終えるころには、ご家族の状況に合った「次の一手」が見えているはずです。
この記事でわかること:
- 認知症で口座が凍結される仕組みと、銀行が凍結する判断基準
- 凍結を回避・解除できる4つの選択肢(費用・期間・柔軟性の比較)
- 2021年に変わった全銀協指針と、凍結後の引き出しを依頼するコツ
- 判断能力が残っているうちに準備しておくべきこと
なぜ認知症で銀行口座が凍結されるのか
「凍結」は本人を守るための仕組み
銀行が認知症の本人の口座取引を制限するのは、本人を守るためです。判断能力が著しく低下した状態で多額の出金や契約を行うと、本人の財産が失われたり、第三者に悪用されたりするリスクがあります。
法的な根拠は 民法第3条の2。「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」とあり、判断能力を欠く状態での金融取引は無効になります。銀行は後で取引が無効と主張されるリスクを避けるため、取引を停止します。
凍結のきっかけは「銀行が認識した瞬間」
ここで多くの方が誤解しているポイントがあります。認知症と診断された事実だけで、銀行が自動的に口座を凍結するわけではありません。銀行が「本人の判断能力が著しく低下している」と認識したタイミングで、初めて取引が制限されます。
| きっかけ | 凍結リスク |
|---|---|
| 家族が窓口で「母が認知症で」と説明 | 高 |
| 本人が窓口で記入や応答に著しい困難を示す | 高 |
| 銀行員の自宅訪問時に異変を察知 | 中 |
| 介護施設や病院から銀行に連絡が入る | 中 |
| 家族や本人が情報を出さず、ATMで引き出しを続ける | 低 |
つまり、何の準備もせず銀行に認知症を伝えてしまうと、その日からまとまったお金が動かせなくなるのが現実です。準備が整う前に窓口で告げてしまった、というケースはとても多くあります。
凍結される金融資産の規模
第一生命経済研究所の試算では、2030年には認知症の人が保有する金融資産が約215兆円に達すると見込まれています(同研究所「認知症患者の金融資産200兆円の未来」、2018年公表のデータをもとに更新値あり)。日本の個人金融資産(約2,000兆円)の1割を超える規模が、本人の判断能力低下によって動かしにくくなる可能性があるということです。
「親の介護で足腰がボロボロです」家族介護者の中には、身体に異変が起きてから自分の疲れや限界に気づく人もいる。ここまで追い込まれると共倒れや「こんな事になったのは介護のせいだ」とストレスから虐待に発展するケースも。家族の代わりは誰にもできない。身体介護は介護サービスで負担の軽減を。 — Xユーザー(LIFULL介護編集長・小菅秀樹氏)2025年11月
身体介護だけでなく、お金まわりの負担も「気づいた時には限界」になりがちです。次節で、凍結を回避できる4つの選択肢を比較します。
凍結を回避・解除する4つの選択肢
ここからが本題です。認知症と銀行口座の問題に対して、現在使える主な選択肢は次の4つです。
4つの選択肢を1枚で比較
| 選択肢 | 必要な判断能力 | 初期費用 | 月額費用 | 柔軟性 | 監督機関 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 代理人指定預金(代理人カード) | 必要 | 0円〜 | 0円 | 中(取引銀行のみ) | なし |
| ② 任意後見制度 | 必要 | 約5〜15万円 | 監督人報酬 月1〜2万円 | 中(裁判所監督下) | 家庭裁判所 |
| ③ 家族信託 | 必要 | 約30〜100万円 | 0円〜 | 高(契約内容で柔軟) | なし |
| ④ 法定後見(成年後見) | 不要 | 約1〜30万円 | 後見人報酬 月2〜6万円 | 低(裁判所監督下) | 家庭裁判所 |
最大のポイントは「判断能力が必要かどうか」です。①〜③は本人の判断能力があるうちにしか契約・届出ができません。判断能力が著しく低下してからは、④の法定後見しか選択肢が残りません。だからこそ、認知症の兆候を感じた時点での早期準備が分かれ目になります。
① 代理人指定預金・代理人カード
本人があらかじめ「この親族なら自分の代わりに引き出してよい」と銀行に届け出ておく仕組みです。代理人カードは長く存在しましたが、ここ数年は「代理人指定預金」として、本人の判断能力低下後も親族が継続的に取引できるサービスを各銀行が拡充しています。
- 三菱UFJ銀行「代理人指定サービス」
- 三井住友銀行「代理人取引サービス」
- みずほ銀行「代理人指名手続き」
- ゆうちょ銀行「代理人キャッシュカード」
費用はほぼ無料で、手続きも比較的シンプル。**「親が元気なうちにできる、最も簡単な備え」**として、まず検討する価値があります。
ただし対象は届出した銀行のみで、複数行に資産が分散している場合は1行ずつ手続きが必要です。また、不動産売却や大型契約には使えません。
② 任意後見制度
本人が元気なうちに「将来、判断能力が落ちたらこの人に後見人になってほしい」と公証役場で契約を結んでおく仕組みです。実際に判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立て、そこから後見が始まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公正証書作成費用 | 約2〜3万円 |
| 任意後見契約書作成(専門家依頼時) | 約5〜15万円 |
| 任意後見監督人報酬(必須) | 月額1〜2万円 |
| 任意後見人報酬 | 契約で自由設定(家族なら無償も可) |
家族を後見人に指定できる点が大きなメリット。ただし監督人の選任が必須で、その報酬は必ず発生します。
③ 家族信託(民事信託)
本人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に対し、自分の財産の管理・処分を任せる契約を結ぶ仕組みです。最も柔軟性が高く、不動産の売却や賃貸経営、株式の運用なども可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 信託契約書作成(専門家依頼) | 約30〜100万円 |
| 信託登記費用(不動産がある場合) | 固定資産税評価額の0.4%程度 |
| 公正証書作成費用 | 約3〜10万円 |
| ランニングコスト | 原則0円(受託者が家族の場合) |
初期費用は高めですが、契約後は裁判所の関与がなく、本人が亡くなるまで柔軟に運用できます。資産規模が大きい家庭・実家不動産の処分を視野に入れる家庭には有力な選択肢です。
④ 法定後見(成年後見)
判断能力が著しく低下した後でも利用できる、最後の砦です。家庭裁判所に申立てを行い、後見人が選任されます。
詳細は 成年後見人の費用はいくら? で解説していますが、要点は次のとおり。
- 申立て費用:自分で1〜2万円、専門家依頼で10〜30万円
- 後見人報酬:月額2〜6万円(管理財産による)
- **後見人の約80%は専門職(弁護士・司法書士等)**が選任される
- 原則として「財産を守る」運用に限定され、家族の希望どおりにはなりにくい
「判断能力が落ちてから慌てて④を選ぶ」のは、4つの選択肢の中で最もコストが高く、柔軟性も低いルートになります。
RP 認知症+糖尿病とか、認知症+精神疾患とか…施設でもケアが本当に大変なので、在宅でご家族をみている方の心労は察して余りある。本当にご苦労さまです。罪悪感なく専門家にお任せしていいと思います。 — Xユーザー(介護現場経験者)2026年3月
お金の管理も同じです。自分たちで抱え込まず、司法書士・弁護士・銀行の窓口担当者・地域包括支援センターに「現状」を相談する選択肢があります。
もし凍結されてしまったら——2021年の全銀協指針を活用する
「準備する前に、もう凍結されてしまった」という方もいるはずです。あきらめる前に知ってほしいのが、2021年2月の 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」 です。
全銀協指針が変えたこと
この指針は、認知判断能力が低下した顧客の取引について、銀行が親族からの依頼に柔軟に対応する考え方を整理したものです。
認知判断能力が低下した顧客のために、その親族等から取引依頼があった場合、医療費の支払等、本人の利益が明らかな範囲においては、できる限り柔軟に対応することが望ましい。
要点を抜粋すると次のとおり。
- 本人の利益が明らかな支払い(医療費・介護施設費・税金・公共料金等)は、親族による代理出金を柔軟に検討
- 必要に応じて、診断書・領収書・親族関係の確認書類の提示を求める
- 成年後見制度の利用が望ましいケースを案内する
- 銀行ごとの対応方針を顧客に分かりやすく説明する
凍結後に窓口で交渉する5つのコツ
実際に窓口で交渉する際、押さえておくと有利な点をまとめます。
- 本人の利益のための支出だと明確に伝える:医療費・介護費・生活費の領収書や見積書を持参
- 診断書を準備する:認知症の診断書があると、銀行も対応の根拠を持ちやすい
- 戸籍謄本で親族関係を証明する:本人との続柄が明らかになる書類を用意
- 取引店に事前連絡する:いきなり訪問せず、来店日と用件を電話で予約
- 複数行・複数窓口の対応差を比較する:1行で断られても、他行・他窓口では応じる事例あり
それでも対応してもらえない場合は、法定後見(成年後見)の申立てに進むことになります。詳しい流れは 成年後見人の費用はいくら? を参考にしてください。
今から準備しておく3つのアクション
「親はまだ元気だけど、いつかは…」と考えている方には、判断能力があるうちにできる3つの準備をおすすめします。
アクション1: 親と「お金の場所」を共有する
- どの銀行・証券会社に口座があるか
- 通帳・キャッシュカード・印鑑のしまい場所
- 住宅ローン・生命保険・固定資産税などの支払い口座
- 公的年金の受取口座
エンディングノートに記入してもらう、または通帳・カードの一覧をスマホで撮影しておくだけで、いざという時の動きが大きく変わります。
アクション2: 取引銀行に「代理人指定」を相談する
最も手軽に始められる対策です。親と一緒に取引銀行の窓口で、「代理人指定預金」「代理人カード」のサービス内容を聞いてみてください。手続きはおおむね30分〜1時間程度で完了します。
アクション3: 専門家への初回相談を予約する
資産規模が一定以上(不動産あり、預金1,000万円超など)の場合は、家族信託や任意後見の専門家相談を予約しましょう。多くの司法書士・弁護士事務所が初回相談を無料〜1万円程度で受け付けています。
なんか上手い呼び方がないかと思っていたら、いつのまにか「ビジネスケアラー」という言葉が誕生してました。これは「ビジネスとして介護をする人」ではなく、「仕事をしながら介護もする人」を指すようです。私自身、これが超大変だったので、ぜひ知見を共有したいです。 — Xユーザー(元ビジネスケアラー)2025年1月
仕事をしながら親の介護とお金の手続きを並行するのは、想像以上の負担です。専門家の初回相談に1時間使うことは、後で何十時間ものトラブル対応を防ぐ投資になります。
あわせて読みたい
- 成年後見人の費用はいくら?種類・申立て方法・負担軽減策
- 親の認知症への対応ガイド — 最初にやるべき3つのこと
- 介護でお金がないときの対処法 — 公的支援と費用軽減策
- 介護施設の費用相場と種類別の比較
まとめ — 「動けるうちに動く」が最大のリスクヘッジ
認知症による口座凍結は、家族の生活に直結する問題です。整理すると、覚えておきたいポイントは次の4つです。
- 凍結のトリガーは「銀行の認識」。診断の事実だけで自動凍結されるわけではない
- 判断能力があるうちに使える選択肢は3つ(代理人指定・任意後見・家族信託)。すべて「親が元気な今」しか手続きできない
- 凍結後でも諦めない。2021年の全銀協指針により、本人の医療費・介護費の引き出しは柔軟化されている
- 最後の手段が法定後見。月2〜6万円が継続的に発生する、最もコストの高いルート
まず取り組んでほしいのは、取引銀行の窓口で「代理人指定預金」について聞くこと。費用ゼロ、所要時間1時間で、最大のリスクをひとつ減らせます。資産規模が大きい場合は、司法書士の初回無料相談に予約を入れてみてください。
親の認知症対応の全体像については 親の認知症への対応ガイド で、介護費用全般の問題は 介護でお金がないときの対処法 も参考にしてください。
次の一歩を、一緒に考えませんか
ここまでお読みいただきありがとうございました。「うちの場合、どの選択肢が合うのかわからない」「家族で話し合っても結論が出ない」というご家族のために、介護のミカタは以下の2つのご支援を用意しています。
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