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親が認知症で「嘘をつく」と感じたら——脳の4分類別NG/OK対応マップ
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「同じ話を何度も」「やってないことをやったと言う」——『嘘』と感じる場面で家族の中で何が起きるか
5月のある日曜日、リビングで70代の母親が娘さんにこう言いました。
「お父さん、まだ仕事から帰ってこないわね」
——お父さんが亡くなったのは15年前です。
娘さんの胸の中に、悲しみ、戸惑い、そして「なんで嘘をつくの」という小さな苛立ちが同時に湧き上がります。同じ場面が週に何度も繰り返されるうちに、「今までの母じゃない」「私を試しているのか」と感じることもあるかもしれません。
演歌歌手・さくらまや、認知症の祖母を介護で苦労の日々を告白「きれいごとでは済まされない」本音に集まる心配 — Xユーザー(メディア公式アカウント)2025年7月
『きれいごとでは済まされない』——多くの家族介護者がこの言葉に共感するのは、認知症のある親の『嘘をついている』と感じる場面が、テキストや動画で見るより遥かに重い感情の負担を呼ぶからです。家族側に湧く「悲しさ・戸惑い・苛立ち・自己嫌悪」の4つの感情を一気に揺さぶる発言が、毎日繰り返される。これが認知症ケアの最も負荷が大きい局面の一つです。
この記事でわかること:
- 親の認知症で『嘘をつく』と感じる場面の正体——医学的な脳の4分類(作話/妄想/取り違え/見当識障害)
- 4分類別の家族対応マップ——NGフレーズ5つ vs OK言い換え5つの対比表
- 『嘘』と感じる発言が出始めた日からの90日対応マップ——30日・60日・90日のチェックリスト
- 家族の感情ダメージを測る7質問セルフチェック——介護者が自分を守る境界線
『嘘』と感じる場面の正体——脳の4分類で何が起きているか
結論: 認知症のある方が『嘘をつく』と感じる場面は、医学的には『作話』『妄想』『取り違え』『見当識障害』の4分類で整理されることが多く、いずれも本人の意思ではなく脳の機能変化が背景にあるとされています。
4分類とその脳の機序(編集部整理)
日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン』、厚生労働省『認知症施策推進大綱』『認知症の理解と対応』、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターでの説明資料を編集部が家族向けに翻訳した4分類です。
| 分類 | 典型例 | 脳の機序(推定) | 家族が感じる感情 |
|---|---|---|---|
| ① 作話(さくわ) | 食事をしたあとで『朝から何も食べていない』と訴える | 短期記憶の空白を脳が無意識に埋める(虚記憶の生成) | 「嘘でしょ」「私を疑ってる?」 |
| ② 妄想 | 『財布を盗まれた』『嫁が私を毒殺しようとしている』 | 不安と記憶障害が組み合わさり被害的解釈が固定化 | 「裏切られた」「ひどい言葉」 |
| ③ 取り違え | 娘を妹と呼ぶ/30年前の家を現在と思う | 時間軸・人物・場所の記憶階層が混線 | 「私のことを忘れた」 |
| ④ 見当識障害 | 『お父さん(亡くなった夫)はいつ帰ってくるの』 | 時間・場所・人の見当識を担う脳領域の機能低下 | 「今のは嘘でしょ」と現実を突きつけたくなる |
※4分類は重なる場面も多く、一つの発言が複数分類にまたがる場合もあります。家族側の対応の方向性を整理するための見取り図としてご活用ください。
一昨年他界した母が亡くなる2週間位前に認知症を発症していたのですごく解る/独り言が多いのと会話がかみ合わないなと思い始めたある日、他人に話しかける様にニコニコと敬語で『あの~どなたか〇〇して頂けますか』と言って来て頭が真っ白になった/在宅介護をされる方はどうか背負いすぎないで欲しい — Xユーザー(家族介護経験者)2025年5月
家族を『他人』として認識し、敬語で話しかけてくる——これは上の表の『③ 取り違え』と『④ 見当識障害』が同時に起きている場面です。本人にとっては『目の前の人は知らない人』として体験されており、嘘をついているのではなく『見えている世界』そのものが家族と異なっているのです。背負いすぎないでほしいというメッセージは、この『見えている世界の違い』を家族側が一人で吸収しきれないことへの、経験者からの優しい注意喚起だと編集部は受け止めています。
出典: 厚生労働省『認知症施策推進大綱』、厚生労働省『認知症の理解と対応』
『嘘』と読み解かないための一行翻訳
4分類のいずれであっても、家族側で次のような一行翻訳を頭に入れておくと、感情の負担が小さくなる方が多いとされています。
- ①作話 → 『記憶の空白を脳が埋めようとしている』
- ②妄想 → 『不安が言葉に変換されている』
- ③取り違え → 『記憶の地図が再編されている』
- ④見当識障害 → 『時計と地図と顔の見え方が変わっている』
『嘘をつく親』ではなく『脳の機能が変化したご本人』として読み直すと、対応の選択肢が広がります。本人を責める言葉ではなく、症状の背景に寄り添う対応へと言い換えるための土台です。最初に気になる発言が出始めた段階の対応については、本サイトの親が認知症かもしれない——最初にやるべき3つのこともあわせてご確認ください。
4分類別 家族対応マップ——NGフレーズ5つ vs OK言い換え5つの対比表
結論: 認知症のある方への家族の言葉は、否定型の5つのNGフレーズを受容型の5つのOK言い換えに置き換えるだけで、本人の不安と家族の負担が同時に小さくなるとされています。
NGフレーズ5つ vs OK言い換え5つ(編集部整理)
日本認知症ケア学会のケアガイドライン、パーソン・センタード・ケア/バリデーション療法の基本原則、地域包括支援センターの家族向け資料を編集部が家族向けに翻訳した対比表です。
| # | NGフレーズ(否定型) | OK言い換え(受容型) | 4分類との対応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 『嘘でしょ』 | 『そうなんだね』 | ①作話・②妄想 |
| 2 | 『さっき言ったよね』 | 『もう一度聞かせて』 | ①作話・③取り違え |
| 3 | 『そんなことしてないよ』 | 『困ったね、一緒に確かめよう』 | ②妄想 |
| 4 | 『何で覚えてないの』 | 『大事な話なんだね、ゆっくりで大丈夫』 | ①作話・③取り違え |
| 5 | 『いい加減にして』 | 『少し休もうか、お茶飲もう』 | 全分類共通 |
なぜ言い換えが効くのか——3つの脳科学的根拠(編集部要約)
OK言い換えが本人と家族の双方に効く理由として、認知症ケア研究では以下が指摘されています。
- (1) 否定の言葉は扁桃体を刺激する: 否定された本人は不安と恐怖を強め、結果としてBPSD(行動・心理症状)が悪化する循環に入りやすいとされています
- (2) 受容の言葉は安心感を保つ: 『そうなんだね』『困ったね』など本人の感情に寄り添う言葉は、本人の警戒モードを下げ、家族との関係性を保ちます
- (3) 家族側のストレス反応も下がる: 否定の言葉は発した家族側もアドレナリンを出すため、言い換えるだけで家族の疲弊速度が緩やかになる方が多いとされています
物盗られ妄想を含むBPSDへの対応技法は、本サイトの認知症のBPSD(周辺症状)への対応7つのコツで7つの場面別に詳しく整理しています。性格変化や脱抑制が前面に出るタイプ(前頭側頭型認知症)は症状の出方が異なるため、前頭側頭型認知症(FTD)の特徴と家族ができる対応も合わせてご確認ください。
『嘘』が出始めた日からの90日対応マップ——30日・60日・90日のチェックリスト
結論: 『嘘』と感じる発言が出始めたら、30日(医療と公的相談の起点)→60日(介護サービスとレスパイトの導入)→90日(施設見学と在宅サービスの見直し)の3段階で具体タスクを進めると、家族の意思決定が体系的に整います。
Day 0-30: 医療と公的相談の起点
最初の30日は『医療の入口を開く』『公的支援の入口を開く』の2点に集中するのが効率的です。
- Day 0-7: かかりつけ医に相談し、必要に応じて『もの忘れ外来』『認知症疾患医療センター』『脳神経内科』『精神科(老年精神科)』への紹介状を依頼
- Day 8-14: 住所地の地域包括支援センターに電話で相談(無料・市区町村ごとに設置)
- Day 15-30: 認知症疾患医療センターまたは認知症初期集中支援チームの面談を予約/要介護認定の申請を市区町村窓口で開始
「親の介護で足腰がボロボロです」家族介護者の中には、身体に異変が起きてから自分の疲れや限界に気づく人もいる。ここまで追い込まれると共倒れや「こんな事になったのは介護のせいだ」とストレスから虐待に発展するケースも。家族の代わりは誰にもできない。身体介護は介護サービスで負担の軽減を。 — Xユーザー(LIFULL介護 編集長)2025年11月
家族介護を継続的に支える専門家からも、最初の30日で公的支援にアクセスすることが推奨されています。家族の限界が来てから動くのではなく、初動の30日で外部の手を借りる土台を作るほうが、結果的に在宅期間を長く保てるケースが多いとされています。
Day 31-60: 介護サービスとレスパイトの導入
要介護認定の結果を踏まえ、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所のケアマネ)が決まったら——
- Day 31-45: ケアプラン作成。訪問介護・通所介護(デイサービス)・福祉用具レンタルなどを組み合わせ、家族の手から離せる業務を3つ以上特定
- Day 46-60: ショートステイ(短期入所生活介護)の利用を試験的に1〜2泊から開始。家族が一晩でも介護から離れる時間を作る
ショートステイは『家族が休むため』に積極的に使う制度です。初回はご本人が不安がる場合もありますが、3回目以降は慣れる方が多いとされています。物盗られ妄想・興奮・介護拒否などのBPSDが強い場合は、ショートステイ導入と並行して認知症のBPSD(周辺症状)への対応7つのコツの対応技法を組み合わせると効果的です。
Day 61-90: 施設見学と在宅サービスの見直し
60日時点で『嘘』と感じる場面が減らない、家族の心身が削られている場合は——
- Day 61-75: グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・特別養護老人ホーム・介護付き有料老人ホームの3タイプを各2施設、計6施設の見学を目安に進める
- Day 76-90: 在宅継続か施設入所かの選択肢を、ケアマネ・本人・家族で擦り合わせ/2世帯目以降の家族(きょうだい・配偶者)と方向性の共通認識を作る
施設入所は『家族が見捨てる』ことではなく、本人の安全と家族の生活を両立するための一つの選択肢です。罪悪感の整理については親を施設に入れる罪悪感の正体で扱っています。
出典: 厚生労働省『地域包括支援センターの概要』、厚生労働省『認知症施策推進大綱』
家族の感情ダメージを測る7質問セルフチェック——『許されたい』気持ちに気づく
結論: 親の認知症で『嘘をつく』と感じる発言が続くと、家族介護者は本人の症状ではなく自分の感情にエネルギーを取られていきます。7つの質問で自分のダメージレベルを定期的に測ることが、共倒れを防ぐ境界線になります。
7質問セルフチェック(編集部作成)
過去2週間を振り返って、以下の7項目のうち何項目に当てはまるかをチェックしてください。
- (1) 親の発言を『嘘』と感じて、寝る前に思い出して涙が出る
- (2) 親に『それは違うよ』と強い口調で言ってしまい、自己嫌悪している
- (3) 自分の食事や睡眠を後回しにして親の対応をしている
- (4) 仕事中も親の発言が頭から離れない
- (5) 親と二人になるのを避けたいと感じる
- (6) 『私が消えれば楽になる』と一瞬でも考えたことがある
- (7) 介護のことを誰にも相談できていない
スコア別の編集部推奨アクション
| 該当数 | 状態 | 編集部推奨アクション |
|---|---|---|
| 0-1項目 | 比較的余裕あり | 月1回のセルフチェックを継続 |
| 2-3項目 | 注意域 | 地域包括支援センターに電話で相談(無料) |
| 4-5項目 | 危険域 | ショートステイの利用予約+認知症の人と家族の会(0120-294-456)に連絡 |
| 6-7項目 | 緊急域 | 24時間以内によりそいホットライン(0120-279-338)・いのちの電話(0570-783-556)・かかりつけ医のいずれかに連絡 |
RP 認知症+糖尿病とか、認知症+精神疾患とか…/施設でもケアが本当に大変なので、在宅でご家族をみている方の心労は察して余りある。本当にご苦労さまです。/罪悪感なく専門家にお任せしていいと思います。 — Xユーザー(介護現場経験者)2026年3月
現場の介護経験者からも、『罪悪感なく専門家にお任せしていい』というメッセージが繰り返し発せられています。7質問で4項目以上に当てはまった方は、ご自身を責めるのではなく、専門家に頼ることが本人の安全と家族の生活を両立する現実的な選択肢になり得ます。
必ず使える相談窓口一覧(無料を含む)
| 窓口 | 連絡先 | 備考 |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 市区町村ごと | 介護全般の相談・無料 |
| 認知症の人と家族の会 | 0120-294-456 | 全国組織の家族会 |
| よりそいホットライン | 0120-279-338 | 24時間無料 |
| いのちの電話 | 0570-783-556 | 24時間 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556 | 自治体により異なる |
| 認知症疾患医療センター | 都道府県ごと | 専門医療相談 |
出典: 厚生労働省『まもろうよ こころ』、認知症の人と家族の会
まとめ——『嘘』と読み解くより『脳の症状』と読み解くと家族の負担が変わる
親の認知症で『嘘をつく』と感じる場面の正体は、医学的には『作話』『妄想』『取り違え』『見当識障害』の4分類で整理でき、いずれも本人の意思によるものではなく脳の機能変化が背景にあるとされています。家族側で『嘘をつく親』から『脳の機能が変化したご本人』へと読み直しの一行翻訳を頭に入れ、否定型のNGフレーズ5つを受容型のOK言い換え5つに置き換えるだけで、本人と家族の双方の負担が小さくなる方が多いとされています。
行動の方向としては——
- 読み替える: 『嘘をついている』ではなく『脳の4分類のどれかが起きている』と読み替える(本記事H2-1)
- 言い換える: NGフレーズ5つ→OK言い換え5つに置き換える(本記事H2-2)
- 動き出す: 30日・60日・90日の対応マップで医療と公的相談、介護サービス、施設見学を段階的に進める(本記事H2-3)
- 自分を測る: 7質問セルフチェックで家族の感情ダメージを月1回測り、4項目以上なら専門家に頼る(本記事H2-4)
——の4点が、家族介護者が今日から始められる現実的な選択肢です。
『嘘でしょ』『さっき言ったよね』を言わずに済む夜は、本人の安心だけでなく、家族介護者ご自身の心身を守ることにもつながります。『きれいごとでは済まされない』日々の中で、4分類と4ステップが少しでも家族の負担の翻訳器になれば、編集部としてこれ以上の願いはありません。
※90日対応マップが効かない3条件: ①暴力や自傷が出ている場合は90日を待たず即時に認知症疾患医療センター・かかりつけ医・救急に連絡、②家族介護者ご自身に『消えたい』気持ちが浮かぶ場合は7質問チェックの該当数に関わらず24時間以内に相談窓口へ、③ご本人がひとり歩き(外出して戻れない行動)で行方不明歴がある場合は90日を待たず警察の生活安全課と地域包括支援センターに先行相談——この3つに該当する場合は、段階的な対応より緊急対応を優先してください。
本記事は日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン』、厚生労働省『認知症施策推進大綱』『認知症の理解と対応』『地域包括支援センターの概要』、認知症の人と家族の会の公開資料を編集部が独自に整理した内容です。4分類・NGフレーズ/OK言い換え・90日対応マップ・7質問セルフチェックは編集部が家族介護者向けに翻訳したフレームワークで、医学的診断・治療方針の代替ではありません。お困りの症状についてはかかりつけ医・地域包括支援センター・認知症疾患医療センターに必ずご相談ください。
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