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介護求人倍率30.96倍なのに倒産176件 — 訪問介護"二極化"の正体と、転職前に必ず確認する5項目

介護のミカタ監修委員会 監修

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「求人があふれているのに、勤め先が消える」——同じ業界で起きている矛盾

介護職ってこんなに社会から必要とされているのに、手取り20万円行かないとか辛すぎない?聞いた話だと地方では手取り13万円って方もいた。介護施設が無くなったら困るんじゃないの?普通の生活も厳しい給料で誰が介護職目指すんだよ。 — Xユーザー(現役介護士・地方の手取り13万事例に言及)2026年2月

訪問介護員の有効求人倍率は30.96倍。1人の求職者に約31事業所が手を挙げる、業界外から見れば信じられない売り手市場です。

ところが同じ2025年、介護事業者の倒産は176件で過去最多を更新しました。うち訪問介護が91件で3年連続の最多更新。「人が足りない」と言われ続ける業界で、最も人手不足が深刻な訪問介護こそ、最も多く倒産しているのです。

通常なら「需要が増えれば事業者は潤う」はずです。しかし介護業界では、その常識が壊れています。求職者にとっては類例のない売り手市場、事業者にとっては”淘汰の年”——両極が同時進行している。これが2026年の介護労働市場の正体です。

この記事でわかること:

  • 求人倍率30.96倍と倒産91件が同時進行する構造
  • 倒産する事業所が事前に出す6つの前兆サイン
  • 転職前に必ず確認する5項目と2026年6月臨時改定の影響

数字で見る”二極化”——求職者と事業者の景色は正反対

訪問介護員の求人倍率は介護全体の約7.6倍、全産業平均の約26.7倍。一方で同じ訪問介護の倒産件数は3年連続で過去最多を更新中。同じ業界・同じ職種でありながら、求職者から見れば類例のない売り手市場、事業者から見れば最多倒産年——景色は正反対です。

求人サイドの数値

指標数値出典
訪問介護員の有効求人倍率30.96倍厚生労働省「介護関係職種の有効求人倍率」
介護関係職種 有効求人倍率4.08倍同上
全産業平均 有効求人倍率1.16〜1.20倍厚生労働省「一般職業紹介状況」
介護職員 必要数(2026年)240万人(25万人不足)厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」

倒産サイドの数値

指標数値出典
2025年 介護事業者倒産176件(過去最多)東京商工リサーチ「2025年介護事業者倒産」
うち訪問介護倒産91件(3年連続最多)東京商工リサーチ「訪問介護倒産」
倒産原因「販売不振」の比率84%同上
倒産事業所の従業員10人未満比率87%同上
倒産事業所の負債1億円未満比率89%同上
休廃業件数653件(過去最多)同上

夜勤ってめちゃくちゃ身体に負担かかるんだよね…調べると『夜勤してる人はしてない人よりも死亡率が”11%“高くて15年以上続けている人は”23%“も高い』。そもそも夜勤してやっと十分(平均以下〜並)な給料を貰えるシステムがバグってる。「夜勤しないと稼げない」これがどれだけヤバい事か… — Xユーザー(現役介護士・夜勤の健康リスクを訴える)2025年10月

このX声が示すのは、求人倍率の数字だけでは見えない**“労働条件の質”の問題**です。求人があっても、その先に健全な経営と適正な給与があるとは限りません。二極化の起点は「事業者がどう設計されているか」を見抜けるかどうかにあります。


なぜ”求人倍率30.96倍と倒産91件”が同時に起きるのか

需要は増え続けている。にもかかわらず、需要を取り込めない小規模事業所が現金不足で消えている——これが構造の核心です。

3つの圧力が同時に小規模訪問介護事業所を締め上げています。

圧力1:採用が機能不全に陥っている

訪問介護員の有効求人倍率30.96倍は、裏を返すと**「1事業所が31社と人を取り合っている」**状態です。新人を採用しても、給与・条件のより良い事業所に短期間で流出する。サービス提供責任者を含めて職員が定着しない事業所は、利用者からの依頼に応えられず、契約打ち切りが連鎖します。

圧力2:報酬改定で訪問介護の基本報酬が抑制された

2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬は身体介護・生活援助ともに引き下げ、もしくは据え置きとなりました。利用者数を増やせない事業所は、報酬の積み増しを処遇改善加算で取ろうとするほかなくなり、加算申請のための事務体制を整えられない小規模事業所が取り残されました。

圧力3:物価高が運転資金を直撃した

ガソリン代・PPE(手袋・マスク等の感染対策用品)・水道光熱費・通信費——訪問介護の運転コストは2022年以降ほぼ全項目で上昇しています。利用者あたりの単価が増えない一方で固定費だけが上がる構造で、東京商工リサーチの集計では倒産事業所の84%が販売不振、87%が従業員10人未満、89%が負債1億円未満と、小規模事業所への偏りが鮮明です。

つまり、「需要が増えている」のは事実ですが、その需要を取り込めるのは加算申請を運用できる人員体制・利用者を確保できる営業力・運転資金を回せる経営体力の3点を持つ事業所だけ。これらを欠く小規模事業所は、求人倍率がいくら高くても淘汰されていきます。


倒産する事業所が事前に出す6つの前兆サイン

働いている事業所が危ないかどうかは、決算書を見なくても現場のサインで判別できます。——介護の倒産は突然ではなく、3〜6か月の予兆期間を経て発生するケースが大半です。

#前兆サインなぜ危険か
1サービス提供責任者の連続退職・交代が3か月で複数加算申請・利用者調整の要が崩れ、収益基盤が即座に揺らぐ
2給与遅配・賞与カット・締日変更現金繰りが回らないシグナル。労基法違反の入口
33〜4日連続夜勤シフトの常態化人員配置基準ぎりぎりの綱渡り。重大事故の前兆
4利用者の急減(紹介経路の固定先が1〜2に偏る)病院・包括との関係悪化や近隣競合の参入
5消耗品の質的劣化(手袋・PPE等を突然安価品に)仕入れ削減=現金温存モードに入った合図
6管理者がケアマネ・現場を兼務し始める人員配置基準維持のための応急処置。経営者疲弊の段階

このうち2つ以上が同時に出現したら、転職活動を並行して始めることを推奨します。サインが3つ揃った段階で、半年以内に休廃業に至るケースは介護業界紙でもたびたび報じられています。

特に「給与遅配」「サ責連続退職」「消耗品の質的劣化」のいずれかが出始めたら、即座に在職中の情報収集を始めてください。倒産後の転職活動は失業期間が発生しやすく、生活への影響が大きくなります。

なお、夜勤の負担に関する具体的な体感は介護職の夜勤がきつい理由と続け方に、転職での失敗例は介護職の転職で失敗する人の典型パターンにまとめています。


転職前に必ず確認する5項目

事業所選びの軸は「経営体力」「加算区分」「人員配置」「ICT」「開設年数」の5点。求人サイトの条件検索だけでは見えない、聞き出すべきポイントを整理します。

チェック1:法人の母体と財務基盤

社会福祉法人・医療法人を母体に持つ事業所は、相対的に運転資金の裏付けが厚く、短期の資金繰りで倒れるリスクが低めです。中小株式会社の単独事業所は、母体グループや出資者の有無を必ず確認しましょう。法人格と運営年数は介護事業所検索(WAM NET)で照合できます。

派遣事業を通じて事業所の内部情報(離職率・経営状況・職場の雰囲気)を取得しやすいのが大手転職エージェントです。職場取材データを公開しているレバウェル介護で経営母体つきの求人を確認すると、応募前に運営法人の体力を把握できます。

チェック2:処遇改善加算の取得区分

2024年度に一本化された介護職員等処遇改善加算は、区分IとIVで年収換算約50万円の差が出ます。求人票に区分の記載がない場合は面接時に「加算区分はIですか?II以下ですか?」と直接確認しましょう。

加算区分IとII以上の取得施設だけを絞り込んだ求人を見たい場合は、マイナビ介護職で加算区分の高い求人を比較すると効率的です。9.6万件のうち、加算区分Iを取得済みの施設は条件で絞り込めます。加算の仕組みは2026年介護報酬改定で給料はどう変わる?で詳しく解説しています。

チェック3:人員配置と利用者数の比

訪問介護で重要なのは、常勤換算職員数と利用者数のバランスです。利用者100人に対して常勤換算職員が10人を下回るような事業所は、サービス提供責任者の事務負担が過大になっており、サイン1(サ責退職)が出やすい構造です。求人票や面接で「常勤換算職員数」「利用者数」を必ず聞きましょう。

チェック4:ICT導入と身体負担軽減策

記録の電子化、見守りセンサー、移乗リフトの導入有無は、経営者の現場理解度を示すバロメーターです。記録を紙運用のまま、移乗もすべて人力という事業所は、人材定着率が低く、結果として人手不足倒産の確率が高まります。スカウト機能で在職中に複数事業所を比較したい場合はカイゴジョブのスカウト求人を匿名で受け取る方法もあります。

チェック5:開設年数と運営の継続性

東京商工リサーチの2025年集計では、倒産事業所の多くが開設5年未満または経営者交代後3年以内に集中していました。開設10年以上の事業所、または開設1年未満で十分な研修体制を整えたオープニング事業所のいずれかが、相対的に安定しやすい層です。

夜勤は「30分前出勤」が暗黙ルールの施設で、就業前なのに?これは残業にならないの?と疑問を持ちつつ従っていた介護職。自分がリーダーになり「情報共有が簡単にできる体制」に変更。もちろん30分前ルールも消滅。現場での小さな違和感に声をあげて動くことが、働き方の改善に繋がる。 — Xユーザー(介護福祉系ナース・現場リーダー経験者)2026年3月

このX声のように、**事業所選びは「現場を変えられる経営層がいるか」**で結果が分かれます。チェック1〜5を満たす事業所を見つけることは可能ですが、それは「待っていれば来る」のではなく、自分で確認の問いを投げて掘り起こす作業です。


2026年6月臨時改定は”二極化”を縮めるか広げるか

訪問介護に最大28.7%の処遇改善加算が設定された一方、加算を取れない事業所では恩恵が届かない——改定は格差を縮めると同時に広げる側面を持ちます。

改定の核となる数値

  • 訪問介護への処遇改善加算:最大28.7%(GemMed 2026年介護報酬改定
  • 介護職員への賃上げ:月額最大+19,000円(基本報酬の6.3%相当・GemMed
  • 新規対象:ケアマネジャー、訪問看護師(介護保険給付分)が処遇改善加算対象に新規追加
加算区分Iを取得済みの事業所では月最大1.9万円の賃上げが実現可能 ケアマネ・訪問看護師まで対象拡大で待遇改善の裾野が広がる 大手・社福系事業所は申請ノウハウがあり恩恵が届きやすい 加算申請の事務体制を持てない小規模事業所は1円も上がらない 結果として「取れる事業所」と「取れない事業所」の格差はむしろ拡大 基本報酬抑制は据え置きのため、加算頼みの収益構造は変わらない

つまり、加算を取得できる事業所では2026年6月以降に給与が上がる一方で、申請事務や人員配置の要件を満たせない事業所では1円も上がりません。これは現職場の経営体力チェックを再確認するタイミングでもあります。改定の詳細は2026年6月の介護報酬臨時改定で要点整理しています。

2026年5月→6月→7月の3か月アクションプラン

アクション目的
5月(今)給与明細+施設の加算区分を確認。WAM NETで自施設の届出加算を照合改定前の基準値を把握
6月改定後の給与明細で差分を確認。加算が反映されていない場合は事務担当に質問約束された6.3%相当が実際に届くかの検証
7月6月給与で増額が見えない/前兆サインが複数出ている場合は情報収集を開始倒産前の早期離脱の準備

求人比較を在職中に効率よく進めたい場合は、職場取材データを公開しているレバウェル介護で職場取材レポートつき求人を見る、または夜勤専従4,329件・年間休日110日以上を切り口に絞り込めるマイナビ介護職で2026年改定対応の求人を比較するを併用すると、3社分の選択肢を在職中に確保できます。


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まとめ — 二極化のなかで「働き口」より「経営体力」を選ぶ

訪問介護員の有効求人倍率30.96倍は、求職者にとって類例のない売り手市場である——これは事実です。しかし「採用されやすさ」と「働き続けられること」は別問題です。同じ業界の中で91件の訪問介護事業所が消えた事実が、その距離を示しています。

この記事のポイント:

  • 二極化は構造的:採用機能不全・基本報酬抑制・物価高の3圧力で小規模事業所が淘汰されている
  • 6つの前兆サインを覚える:サ責退職・給与遅配・連続夜勤・利用者急減・消耗品劣化・管理者兼務
  • 転職前に5項目を確認する:法人母体・加算区分・人員配置・ICT・開設年数
  • 2026年6月改定は格差を広げる側面も持つ:加算を取れる事業所と取れない事業所の差は拡大する

介護の仕事に意義を感じている方にこそ、長く続けられる事業所を選んでほしいと考えています。「働き口がある」ことに安心しきらず、「働き続けられる事業所か」を一歩踏み込んで確かめてください。

求人倍率30.96倍と倒産91件は同時進行している事実です。「採用されやすさ」ではなく「経営体力」を軸に、6前兆サインと5項目チェックで事業所を見極めてください。2026年6月改定後は給与明細の差分を必ず検証しましょう。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。「自分の事業所が危ないかもしれない」「在職中だが情報収集はしておきたい」というご相談に対して、介護のミカタは以下の2つのご支援を用意しています。

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