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介護施設への苦情、関係を壊さない言い方 — クレーマー扱いされない伝え方5原則

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介護施設に「言いたいこと」、ありませんか — 結論から

「紙おむつのあて方なんて、誰も教えてくれないから…」ご主人を介護されている奥さまの一言に、ハッとしました。病院や施設から自宅に戻るときは、介護士さんからトイレ介助や紙おむつの使い方を教わる機会があります。でも、そうした機会がないまま、紙パンツやおむつが… — @keichouST(傾聴するST・言語聴覚士)2026年3月(205いいね)

施設にお願いしたいことや、納得できないことがある。でも、「言ってモンスター家族と思われたら、親への対応が雑になるのではないか」と心配で、言葉をのみ込んでしまう。多くのご家族が抱える感覚です。

先に結論を。介護施設への苦情は、伝え方を変えるだけで「対立」から「協力」に変わります。鍵は3つ。(1)『苦情』を『相談』『お願い』に置き換える、(2)主語を『私たち家族』にして対立構造を避ける、(3)事実→影響→希望の3段階で伝える、です。

この記事では、施設との関係を壊さない苦情の言い方5原則、ケース別の言い回しテンプレート、それでも改善されないときの段階的なエスカレーション経路までを解説します。

この記事でわかること:

  • 関係を壊さない苦情の言い方5原則と、ケース別テンプレート
  • 施設に伝える前に整理しておくべき「事実・影響・希望」の3要素
  • 改善されないときの施設→ケアマネ→市町村→国保連の4段階エスカレーション

データで見る — 介護施設への苦情の実態

介護サービスへの苦情件数

国民健康保険団体連合会(国保連)に2022年度に寄せられた介護サービスへの苦情は全国で約9,700件。前年比で増加傾向にあり、内容は「サービスの質」「職員の対応」「契約・利用料」が上位を占めます。

苦情の主な内訳割合の目安
サービスの質・内容約3割
管理者・職員の対応約3割
契約・利用料・説明不足約2割
その他(権利侵害・事故対応など)約2割

(出典:国民健康保険中央会「介護サービスの苦情・相談の事例集」、各都道府県国保連の年次集計より編集部まとめ)

これは「申し立てまで進んだ件数」で、施設内で解決した苦情や、家族が言えずに飲み込んだ苦情は含まれていません。実数はこの数十倍に上ると推測されます。

苦情を受け付ける3つの公的窓口

介護保険制度では、苦情を受け付ける窓口が法律で定められています。家族はこのいずれにも申し立てができます。

#窓口対応範囲
1施設の苦情受付担当者施設内のサービス全般。介護保険法で設置が義務付け
2市町村の介護保険課・地域包括支援センター地域の介護サービス全般。指導権限あり
3国民健康保険団体連合会(国保連)都道府県単位の第三者機関。調査・改善要請の権限

つまり、施設に直接言いにくいときは飛ばして外部に相談しても良い仕組みになっています。ただし、最初から外部に行くと関係がこじれやすいため、順番に踏むのがおすすめです。

具体的な苦情事例 — 「これは言っていい」の境界線

「これくらいで苦情を言っていいのか」と迷うご家族へ。介護現場の専門家は、制度的に家族が負担しなくて良いはずの費用や、明確な制度違反については、躊躇せず伝えてよいと発信しています。

【特別養護老人ホームで「消耗品を誰が買うのか」問題になったら──】老企第54号を思い出してほしい。【結論】特養で「おむつ代」や「パッド代」は、原則、利用者に請求できません。▼施設でかかる基本のお金・介護保険の自己負担(1〜3割)・食費・居住費(ごはん代+家賃的なもの) — @nobu_fukushi(のぶ・福祉専門家)2025年5月(351いいね)

特養での「おむつ代を別途請求された」「タオル代を実費で取られた」というケースは、制度上は施設負担です。こうした制度違反は、家族が遠慮する話ではありません。


関係を壊さない苦情の言い方 — 5原則

苦情の中身が同じでも、言い方ひとつで施設側の受け取り方は変わります。介護のミカタ編集部が、福祉施設の生活相談員5名と家族10名にヒアリングして整理した5つの原則です。

原則1:『苦情』を『相談』『お願い』に置き換える

最も効果が大きいのが、入り口の言葉を変えることです。

❌ 対立を生む言い方✅ 協力を生む言い方
「苦情があります」「ご相談したいことがあります」
「クレームを入れます」「お願いがあるのですが」
「改善してください」「改善のお知恵をお借りできますか」
「責任者を呼んでください」「相談員さんとお話できますか」

『苦情』『クレーム』『責任者』という単語は、施設職員にとって警戒モード起動の合図です。同じ内容を別の言葉で伝えるだけで、施設側は「一緒に考える」モードに入りやすくなります。

原則2:主語を『私たち家族』にして対立構造を避ける

「あなた(施設)が悪い」という構図ではなく、「私たち家族が困っている」という構図にすると、攻撃されたと感じにくくなります。

❌ 対立構造✅ 協力構造
「あなたたちの対応がひどい」「私たち家族としては、こう感じていて」
「職員教育がなっていない」「私たちが状況を理解できていないかもしれず」
「説明不足だ」「私たちの理解が追いついていなくて、もう一度教えていただけますか」

これは心理的な技法で、相手の防衛反応を下げる効果があります。営業や交渉の世界で「I-message」と呼ばれる手法を、介護の場面に応用したものです。

原則3:事実→影響→希望の3段階で伝える

感情だけをぶつけると、相手は「で、何をしてほしいの?」となります。逆に事実だけを述べると「だから何?」となります。3段階に分けて伝えると、施設側も具体的な対応に動きやすくなります。

【事実】 5月10日の面会時、母の足に青あざを見つけました。
【影響】 家族として心配で、原因を知りたいと思っています。
【希望】 もし転倒や打撲の経緯がわかれば共有いただき、再発防止の工夫を一緒に考えさせてください。

このフォーマットなら、施設側は「事実確認→説明→改善策」と段階を追って対応できます。感情を抑える必要はなく、事実と希望の間に「家族としての気持ち」を1行入れるのがコツです。

原則4:改善案を一つ添える

「改善してください」だけでは丸投げになります。素人案で構わないので、改善案を1つだけ添えると、施設側は「対案ベースの議論」がしやすくなります。

苦情の中身添える改善案の例
母の食事が冷めている「電子レンジを置く場所はありますか?」
連絡が遅い「LINEや連絡帳での共有はできますか?」
着替えがいつも同じ「ピンクの服を上に置いておいたほうがわかりやすいですか?」

改善案が採用されなくても問題ありません。「家族も一緒に考える姿勢」を見せることが目的です。

原則5:感謝の言葉でサンドイッチする

伝え方の最後の工夫が、苦情を感謝で挟むことです。

【感謝】 いつも母を見ていただきありがとうございます。
【相談】 一つだけご相談したいことがあって…(事実→影響→希望)
【感謝】 お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。

これは形式的に見えて、施設側のメンタルに大きく影響します。介護職は感謝されることが少ない仕事です。感謝を起点に始まる対話は、ほとんど対立に発展しません


ケース別 — 言い方のテンプレート集

実際の場面で使える、5つのケース別テンプレートです。

ケース1:食事介助・嚥下への不安

【場面】 母にむせ込みが増えた気がするが、施設の食事形態は変わっていない。

「いつも食事の介助をありがとうございます。最近、面会のときに少しむせる場面が増えた気がして、家族として心配しています。食事の形態を一段階柔らかくする選択肢はありますか? もしくは、嚥下の様子で何かお気づきの点があれば共有いただけると助かります。」

ケース2:排泄ケア・尊厳に関わる場面

【場面】 おむつ交換のときに居室のドアが開いたままで、廊下から見える状態だった。

「日々のケアありがとうございます。ひとつ相談で、先日の面会のとき、おむつ交換中にドアが開いていて、廊下から少し見える状態でした。母も恥ずかしがる人なので、可能であれば交換中はドアやカーテンを閉める運用にしていただけませんでしょうか。職員さんの動線もあると思うので、現場でやりやすい形があれば教えてください。」

ケース3:職員の言葉遣い

【場面】 ある職員が母に対して「もう、なんでわからないの!」と強い口調で話していた。

「いつもお世話になっています。少し気になる場面があったのでご相談です。先日の面会のとき、母に対して少し強い口調になっている場面を見かけました。お忙しい時間帯だったと思いますし、職員さんを責めたいわけではないのですが、母は耳も遠くなってきていて、強い言葉だと萎縮してしまうことがあって。ゆっくり伝えていただける雰囲気を保てると、家族としても安心できます。」

ケース4:私物の紛失・破損

【場面】 母のお気に入りのカーディガンが見当たらない。

「お忙しいところすみません、ご相談です。先月持ってきた母のピンクのカーディガンが、最近見当たらなくて。洗濯室や他のお部屋に紛れている可能性もあるので、もしお気づきの点があれば教えていただけますか。なくしてしまっても責めるつもりはないのですが、母が気に入っていたものだったので、念のため確認させてください。」

ケース5:転倒・打撲の事後報告がなかった

【場面】 面会したら母にあざがあったが、施設からの連絡がなかった。

「面会で母の腕に青あざを見つけまして、原因を確認させてください。施設の中でのことだと思うのですが、もし転倒などがあったなら、家族にも経緯を共有いただけると安心できます。今後、軽い打撲でも一報いただけるルールにできるか、ご相談させてください。」

— 実際に対話で道が開けたという声が、施設利用者のご家族から発信されています。

要介護3が欲しい理由は特養の申し込みのスタートラインにも立てないから。一昨日までそう思ってた。その話をショート利用中の施設の相談員さんにしたら、ウチは利用が3からで申し込は今でも出来ますよと。そして、実は今なら個室が空いていると教えてもらった。それをケアマネさんに伝えると、 — @happyokan2(たっかん・介護家族)2026年4月(1,132いいね)

相談員という存在を活用するだけで、家族だけでは見えなかった選択肢が見えてくる、というケースは少なくありません。苦情も相談も、まず「現場の相談員に話してみる」ことが、解決への最短ルートです。

施設の選び方・見学チェックリストはこちらで、入所前から良い関係を築くための見学時の質問例を解説しています。


それでも改善されない — 4段階のエスカレーション経路

施設に直接伝えても変化がない場合、段階を追って外部の窓口に相談する選択肢があります。

Step 1:施設の苦情受付窓口・運営法人本部

施設には苦情受付担当者を置くことが介護保険法で義務付けられています。現場職員→相談員と話しても変わらない場合、運営法人の本部に連絡する手があります。多くの社会福祉法人・株式会社が「お客様相談室」を設けています。

  • 連絡先:施設のパンフレットや契約書の末尾に記載
  • 効果:現場が動かない場合、本部からの指示で動くケースが多い

Step 2:担当ケアマネジャー

外部のケアマネジャー(居宅介護支援事業所)が付いている場合、ケアマネを介して施設に伝えてもらう方法があります。第三者のプロが間に入ることで、感情的な対立を避けられます。

  • 連絡先:ケアマネ事業所
  • 効果:ケアマネは施設と取引関係にあるため、客観的に整理した形で苦情を伝えてくれる

Step 3:市町村の介護保険課・地域包括支援センター

市町村には介護保険サービスへの苦情受付窓口があります。匿名相談も可能で、市町村は施設に対して指導・監督の権限を持ちます。

  • 連絡先:市町村の介護保険課、地域包括支援センター
  • 効果:市町村からの指導が入ると、施設の対応が変わる可能性が高い

Step 4:国民健康保険団体連合会(国保連)

最終段階として、都道府県単位の国保連の苦情受付窓口があります。第三者機関として調査し、施設に改善要請を行います。

  • 連絡先:各都道府県の国民健康保険団体連合会
  • 効果:第三者調査が入り、施設の運営状況が公的に確認される

相談時の準備物

どの窓口に相談するにせよ、以下を準備しておくと話が進みやすくなります。

#準備するもの用途
1日時・場所・状況のメモ(時系列)事実確認の根拠
2写真(あざ・物品破損など)客観的な証拠
3施設職員とのやり取りの記録対応経緯の証明
4契約書・重要事項説明書約束された内容の確認

— ただし、家族側からの苦情が必ずしも正当とは限らない、という施設職員側の声もあります。

介護施設ってのは家で困っていたことはある程度は解決できるんだが、解決してよかったねってだけなのに「家で解決できなかったのに、施設では問題が起きないなんておかしいんです!」とマジでクレーム入れられたことある…。いやあのね、それは医師が病気治せるのおかしい!って怒るようなものよ… — @NobunagA_A(NobunagA・介護職)2026年4月(31いいね)

施設側も、家族側の事情と施設の現実の両方を見ています。「家族の希望が、施設の人員配置や他利用者との兼ね合いで叶わない」場面もあることを前提に話すと、対話が前に進みやすくなります。

地域包括支援センターの使い方ガイドはこちらで、市町村窓口の使い分けを詳しく解説しています。


言ってはいけない — 信頼を壊す3つのNG表現

最後に、伝えたあとに関係が修復しにくくなるNG表現を3つ。

NG1:他の利用者・他の施設との比較

「隣の○○さんは丁寧にしてもらっているのに、母はぞんざいだ」 「前の施設のほうが対応が良かった」

比較は職員の自尊心を直接傷つけ、感情的な反発を呼びます。比較ではなく、自分の親の固有の状況で話すと、対話が続きます。

NG2:個人攻撃・人格批判

「あの職員は人として向いていない」 「経験が浅いから話にならない」

特定の職員を名指しで人格批判すると、施設側は守りに入ります。個人ではなく『場面』『状況』に焦点を当てると、改善策の議論になります。

NG3:「クレーム入れる」「ネットに書く」と予告する

「市役所にクレームを入れます」 「ネットに書きますよ」

これは脅迫として受け取られ、建設的な対話の余地を完全に閉ざします。実際にエスカレーションする場合も、予告せずに静かに進めるのが、相手との関係修復の余地を残します。

— 言いにくさを抱えながらも、施設を信頼して任せていい、という発信もあります。

認知症+糖尿病とか、認知症+精神疾患とか…施設でもケアが本当に大変なので、在宅でご家族をみている方の心労は察して余りある。本当にご苦労さまです。罪悪感なく専門家にお任せしていいと思います。 — @mousoumohican(モヒカン・介護職)2026年3月(0いいね)

施設を信頼することと、改善をお願いすることは、両立します。「信頼しているからこそ、もっと良くしたい」という姿勢で伝えると、苦情は施設にとっても歓迎すべきフィードバックになります。


まとめ — 苦情は「対立」ではなく「対話」のきっかけにできる

介護施設への苦情は、伝え方の工夫で、関係を壊さずに改善を引き出せます。

  • 『苦情』を『相談』『お願い』に置き換える
  • 主語を『私たち家族』にして対立構造を避ける
  • 事実→影響→希望の3段階フォーマットで伝える
  • 改善案を一つ添えて対案ベースの対話にする
  • 感謝でサンドイッチする

それでも改善されない場合は、施設の相談員→運営法人本部→ケアマネ→市町村→国保連の順で段階的に相談できます。

「言ったらモンスター家族と思われるのでは」と心配する必要はありません。伝え方さえ工夫すれば、施設側もむしろ「教えてもらえてありがたい」と受け取ります。親のために、安心して声をあげてください。


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